こんにちは。突然ですが、みなさんはビールはお好きですか?暑い夏に喉に流し込む冷たいビールも、暖かい部屋で鍋を囲みながらほっこりと飲むビールも最高ですよね。この文章を書いている間もなんだか飲みたくなってきてしまいました…(笑)。 さて、横浜を代表するビールカンパニーである「横浜ビール」さんの商品の一つである「横浜ウィート」に使用されている小麦が、瀬谷で生産された小麦であるということはご存知でしたでしょうか。 今回は、そんな“瀬谷の小麦”を生産する、瀬谷区竹村町にある「岩﨑農園」の岩﨑良一さんと横浜ビールのゼネラルマネージャーである横内勇人さんの対談をお届けします! “瀬谷の小麦ビール”誕生の裏話から、地元の人を巻き込んだ生産への思いなどたっぷりとお話を伺いました。 ―岩﨑農園さんと横浜ビールさんが、最初にタッグを組んだのはどのようなきっかけだったのでしょうか? 岩﨑さん)2006年ごろに横浜市の農政課の方から、地元のビールの会社さんと地元の麦を使ってビールを作りたいという話が出ているので協力してくれないか、というお話をいただいたのが最初でした。うちはもともと昔から小麦を作っていたのですが、(依頼をされたのは)二条大麦っていうビール専用の麦で、品種も指定されていました。―元々はビール用の麦は作っていなかったということなのですね。岩﨑さん)はい、元々は自分たちで食べる分の小麦しか作っていませんでした。―そこから “小麦のビール”を作るということになった経緯としては? 岩﨑さん)2006年から10年弱は大麦を使ったビールを作っていたのですが、その最中に醸造長の方が2人変わって。醸造長の方が変わると、その方によって作りたいビールというのが変わってくるんですよね(笑) 横内さん)(大きく頷く) 岩﨑さん)それで、当時の醸造長の方から『小麦のビールを作ってみたい』というお話をいただいて、『うちは小麦を昔から作っていて、小麦の方が得意だよ』という話をしたりして。それがきっかけで小麦のビールを作ることになりました。―そうだったのですね!そこから実際に小麦のビールを作ることになって…その過程で大変だったことはありましたか? 岩﨑さん)基本的に、うちで作っていた小麦はパンやうどんに使う小麦だったのですが、ビール用の小麦だと栽培の仕方も全然違くて。例えば、(醸造用は)タンパク質の成分量を上げちゃいけないんです。タンパク質を上げないために肥料を減らすのですが、そうすると小麦の質が悪くなって、ちょっと粒が小さかったり痩せ細ってしまったりして、収穫量が少なくなってしまったりするので、そういった調整をするのが苦労するところですね。パンにするための小麦だったら、肥料をあげて大きく太らせていいんですけど(笑)―1本あたりの粒が小さいということは、それだけ面積を広くするなどして量を増やしているのですか? 岩﨑さん)そうですね。毎年横浜ビールさんから何トン欲しい、と言っていただくのでその分計算はしているんですけど、肥料をあげない分その年の気候とか畑の質に左右されるので。思った以上に畑の質が良すぎちゃってタンパク質が上がっちゃうこともあって。だから、小麦が大豊作だった年は、ビール用としてはあんまりよくなかったりするんです」―粒を大きくして太らせるほど良いと思っていたので驚きです!そういうこともあって、毎年ビールの味も変わったりするということなんですね。 岩﨑さん)そうなんです。―そんな瀬谷の小麦ビールですが、味の特徴はどう言ったところにあるのでしょうか。 横内さん)誕生当初はアメリカンウィートって言って、麦の味わいも感じられるけど、結構スッキリした味のビールでした。でも、より多くの人に小麦の香りを楽しんでもらいたいということで、今販売しているのはベルギーの酵母を使ったベルジャンウィートを作っています。より酵母の華やかさと小麦のまろやかさがあって、香りを感じやすいビールになっています。―途中で味をリニューアルされていたのですね。初めて飲んだ時のことは覚えていますか?岩﨑さん)最初、一口目に入った時に麦の香りがしたのには感動しました。本当に小麦を収穫した時の香りがして、それを市販のビールだと感じたことがなかったので。特に私たちは麦を収穫しているので(麦の香りが)モロにわかるんですよ。横内さん)それはありがたいですね。―周りからも反響があったのではないでしょうか。 岩﨑さん)一番初めは”瀬谷の小麦ビール”っていうことで、顔写真付きのラベルを作っていただいたので反響ありましたね。横内さん)岩﨑さんの写真と、小麦畑の写真を(ラベルに)載せたんですよね。岩﨑さんのことを知っている方は瀬谷に多いから。―“あの岩﨑さんが載っている!”と話題になりますね(笑)岩﨑さん)缶にリニューアルされてからも、(岩﨑農園の)名前は載せていただいて。缶になってから地元のスーパーでも置いていただいているので、LINEでも「買ったよ」と連絡が来ます(笑)。―それは嬉しいですね!岩﨑さん)瀬谷でも駅前のイトーヨーカドーさんに置いていただいているみたいです。―小麦の収穫の際は、地元の方も一緒にされていると伺いました。岩﨑さん)はい。今年は瀬谷区役所のイベントとして、地元の瀬谷区の小学生に、横浜ビールさんに出荷する小麦の収穫体験をしてもらいました。横内さん)4〜5年前は横浜ビールのスタッフが「収穫を知る」という意味で参加していて、今も参加しているんですけど、それをもっと他の方達にも知ってもらいたいというのと、いろんなところで岩﨑さんの話をすると『行きたい』という声を頂くことも多かったので、企業の方と一緒に収穫体験やったりとか、瀬谷西高校の高校生と一緒にやったり、今年は小学生とやったりと、地域の方と一緒に収穫させてもらっています。岩﨑さん)子どもたちもコンバインに乗せてあげて。横内さん)子どもたちに感想を聞くと、みんな「(コンバインを)運転できたのが楽しかった!」って言っていました(笑)。岩﨑さん)農家の人の仕事を知ってもらうためには体験してもらうのがよいですよね。最近はいろいろなところで収穫体験が増えているので、やりたいって言ってくださる地元の方も増えていますね。―収穫体験の中で、印象的だったエピソードはありますか?横内さん)以前、高校生が参加した時に、畑なので汚れる可能性があるじゃないですか。だから体操着で来てって言ったんですけど、制服でローファーで来てしまった子がいて。その格好で畑にいるギャップがすごいなっていうのをすごく覚えています(笑)。でも、学校の近くに畑があるっていうのを知らなかったようなので、いい体験になったんじゃないかなと思います。あと、コンバインをやる時に、岩﨑さんはめちゃくちゃ綺麗に走らせるんですけど、実際にやってみると斜めっちゃったりして意外と難しいんですよね。種を蒔く時も真っ直ぐに蒔くのが難しくて、後から(自分の跡を見ると)『あぁ、ズレてる』って(笑)。そこらへんは体験すると難しさを感じますね。岩﨑さん)種蒔きも手押し車みたいなものでコロコロしながら蒔くんですけど、本当に人の性格がでるんですよ!(笑)几帳面な人もいるし、勢いでやる人もいるし。それが、蒔いた時はわからないけど、芽が出た時に結果がでるので楽しいんです(笑)。麦踏み(小麦の根の張りを良くするためにあえて麦を踏み、強くする工程)もそうですね。真面目にやる人もいるし、こうやった方がいいんじゃないかって、面白いやり方を生み出す人もいるし。やんちゃそうな男の子でもすごい真面目にやるとか、ギャップもあったりして面白かったですね。あと、小学生が意外と運転が上手い。収穫の機械を操縦するのが上手くて、なんで上手いの?って聞いたら『マリオカートみたい』って。小学生たちはマリオカートをやり慣れているから上手いんだって!なるほどなって思いましたね(笑)。―まさかの、ゲームで鍛えられていたとは!(笑)―お二人にとって、瀬谷の小麦ビールとは?横内さん)一昨日も企業さん向けにセミナーをやっていて、その時にビールをお土産に持って帰っていただいているんですけど、そういう時は必ず「瀬谷の小麦ビール」にしているんです。それくらい、うちが一番伝わるビールなんです。やっぱり、こういう人が作っている、というのが伝わるし、お客さんの反応が一番いいのも瀬谷の小麦ビールで。だから、もしかしたら僕の中では、横浜ビールを紹介する、代表のビールが「瀬谷の小麦ビール」なんじゃないかなって思っています。かつ、イベントで出展する時も若い人から年配の人まで、「瀬谷!?」って反応があるんです。「私、瀬谷に住んでいたの」とか、隣の旭区から来た方も「私、隣の区なの」みたいにお声がけを頂くことが多くて、そういう意味で地域を感じるビールでもあるのかなって思っています。岩﨑さん)僕は、“繋がり”ですね。元々農業って、出荷しちゃうとその先が見えないんですね、消費者の方がどんなふうに食べているかっていうのはわからない。でも、横浜ビールさんに協力すると、出荷してからもどんなふうに使われるかっていうのもわかりますし、飲んでもらったり、あと小麦をパンとかうどんにして料理としてもだしているので、食べてもらっている姿がここ(横浜ビール本店)にくればわかる。そういう体験は今まで生産者としてはしていなかったので嬉しいですし、収穫の体験で小学生とか高校生とかいろんな人がきてくれるっていう繋がりもありますし、そういうきっかけができたのがこのビールなのかなと思います。―それこそ、缶にリニューアルされてより遠くの人との繋がりもできたのではないでしょうか。 岩﨑さん)そうですね。スーパーとか量販店にあるのでやっぱり買っていろんな人から『ここにもあったよ』『あそこにもあったよ』って、連絡が来るようになりましたね。 横内さん)缶のラベルも“小麦”っていうところだけ金色にしていて、この部分もみんなですごく話し合ったんです。他のビールは色を変えていないんですけど、このビールは小麦がこだわりだから色を変えて。ラベルにもこだわりがある、横浜ビールにとって軸になっているようなビールです。 ―細部にもこだわりが!缶を手に取った際はぜひチェックしたいですね。お二人にとって、これからの野望はありますか。岩﨑さん)瀬谷では3年後にGREEN×EXPO2027があるので、その会場で瀬谷の小麦ビールを売りたいなと思っています。GREEN×EXPO2027が終わっても、その跡地にテーマパークができるので、そこでも置いていただけるように着々とお話をしています。国際的なGREEN×EXPO2027なので海外からもお客さんが来ます。その時に、地元の特産品として海外の人にも飲んでいただきたいですし、特に海外はクラフトビールの本場ですから、そういう方に飲んでもらえるっていうのは嬉しいですよね。 横内さん)醸造家としては、おいしさを追求するということですね。国際的なビールのコンペがあって銀賞はいただいたんですけど、やっぱり金賞が取れたら価値も上がってくると思うので目指せたらと思っています。毎年味の変化があるので、(コンペに)出品できる時とそうでない時とあるのでタイミングにもよるんですけど、やっぱり狙いたいですね。 ―GREEN×EXPO2027やコンペで「瀬谷の小麦ビール」が海外の方にも届くと嬉しいですね!最後に、瀬谷にお住まいの方へメッセージをお願いします。 岩﨑さん)「瀬谷の小麦ビール」(現在は「横浜ウィート」)は量販店にも置いていますので、ぜひ見つけたら飲んでいただきたいですし、地元の方には贈答品として使っていただけるようになったら嬉しいです。地元の人が県外の人に勧めてくれるようなビールになってくれたらいいなと思っています。 横内さん)毎回いろんなところでビールの話をさせていただいているんですけど、瀬谷の方にも、実は瀬谷にも畑があって、岩﨑さんが小麦を作っていて、っていうのをビールによって伝えていくことができたらなと思っています。今でも岩﨑さんのことを知っている方はたくさんいると思うんですけど、「小麦が作られている」ということをビールを通して瀬谷の方にも知ってもらえたらいいなと思っています。―お話をお聞かせいただきありがとうございました!「瀬谷の小麦ビール」買って帰ります! いかがでしたでしょうか。想いと想い、人と人とがつながって作られている「瀬谷の小麦ビール」。現在は「横浜ウィート」として、イトーヨーカドーなどで目に触れる機会も増えているそうです。 ぜひ手に取っていただき、横内さんと岩﨑さんの思いに心を馳せながら「地元の味」を堪能してみてはいかがでしょうか。